Ｔｒｕｓｔ　ｉｎ　Ｙｏｕ



「それにしても・・あんな綺麗な女性（ひと）が宇宙人だったなんてなぁ・・」
「シンジョウ、お前・・声をかけなくてよかったじゃないか（笑）」
「リーダー、もうそれは言いっこなしですよ〜」


マノン星人による隊長拉致事件も、無事一件落着したある日のこと。
その隊長が会議で不在だったこともあり、例によって司令室で軽口をたたいていると、すかさずレナのやつが話に入ってきた。


「ちょっとぉ・・まぁた性懲りもなくそんなことしようとしてた訳〜！？」
「・・っ何だよお前・・声をかけたら悪いのかよぉ〜・・」


相変わらずこういうところにばっか反応しやがって・・口の減らないヤツだぜ全く。


「悪いも何も・・養成所時代から見てるけどさぁ〜・・今まで成功したためしがないじゃない（笑）」
「何っっ！？」
「え・・・それってホントなんですかレナさん！？」
「あら、あたしが嘘つく訳ないでしょ？（笑）・・下手な鉄砲、どれだけ数打ったって・・当たんなきゃしょうがないのよね〜〜（笑）」
「う・うるせぇ〜！！だいたいなぁ、ＧＵＴＳいちの鈍感男に惚れて、しょっちゅう空回りばっかりしてるお前なんかに言われたかね〜よ！！」
「・・・！！」


そう・・それは所謂売り言葉に買い言葉・・俺にしてみたら、ちょっとした冗談のつもりだった。
けれど、聞いた途端にレナの顔色が明らかに変わり、その場の空気が一気に凍り付く。
そして・・


「ただいま戻りました！・・って・・あれ？？みんなどうしちゃったんですか・・？？」


パトロールから帰ってきたダイゴが訝しがって声を上げたのと、レナが司令室から飛び出して行ったのが同時だった。


「やっちゃいましたねシンジョウさん・・・」
「お前・・ホンマにサイアクな奴ちゃな・・・」


リーダーは小さく溜息をつき、ホリイとヤズミが、心底呆れたといった顔で俺を見る。
ダイゴだけが、訳が分からないと言った様子で、困り果ててその場に佇んでいた。





十数分後。
とりあえずリーダーがダイゴを部屋から連れ出した後、俺は残った２人に散々説教され（ホリイはともかく、何でヤズミのヤツにそこまで言われなきゃならねぇんだよ！？とも思ったけど、反論すると倍ぐらい言い返されそうなんで止めにした）、挙げ句、ヤズミがご丁寧にもＩＤサーチをかけて割り出したレナのところに謝りに行くよう強要され・・・そして今、丁度その場所に着いたところだった。


そこはダイブハンガーの展望室で、探すまでもなく、手すりにもたれて海を見ているらしいレナの後ろ姿が視界に入る。
数十秒間の躊躇いの後、その背中に、俺は思い切って声をかけた。


「レナ・・さっきは悪かった・・・俺が言いすぎたよ・・・すまん」


・・・返事はない。


「・・・レナ・・？？」
「・・やっぱり空回りしてるのかなぁ・・あたし・・・」
「・・え・・！？」


不意を突かれて、思わず小さく声を上げる。
その口調は酷く寂しげで、ひょっとしてぶりぶり怒っているのかも？などと思っていた俺は、抱いていたイメージとのあまりのギャップに、咄嗟には返事ができなかった。
・・レナがゆっくりとこちら側に身体を向ける。
柔らかな春の日差しに照らされたその顔は、どきっとするほど女っぽくて、もはや俺の知っているレナではなく・・愁いを帯びた大きな瞳が、真っ直ぐにこちらを見つめてきた。


・・・ああ・・こいつは・・・本当にダイゴのことが好きなんだな・・・


目があった瞬間、理屈抜きでそう悟って、同時に胸の奥が少しだけ痛む。


やっぱりこいつには叶わね〜よなぁ・・・
咄嗟に心に浮かんだその思いを、俺は慌てて意識の底に押し込めた。


「ねぇ・・そうなんでしょ？？」


重ねてレナが問う。


「そう・・だな。言われてみれば、確かにそうかも知れないな・・」


今のこいつに気休めを言っても仕方がないので、俺も本音で向き合うことにする。
案の定、その言葉を聞いた途端、レナの瞳が切なげに揺れた。


「・・・そっかぁ〜・・・」


溜息混じりの返事が届く。
その声があまりにも辛そうだったので、俺は慌てて先を続けた。


「あ・・でも、それは断じてお前のせいじゃないからな」
「・・え・・・どういうこと・・・？？」
「あのさ、上手く言えないけど・・ダイゴの方が、こっちに対して壁を作ってるような気がするんだよ。ほら、あいつここんとこ、時たま１人で考え込んだりしてるだろ？？
なんかそう言う時って・・誰も入っていけないような雰囲気なんだよなぁ・・・」
「・・へぇ〜・・シンジョウ隊員って、ダイゴのこと・・結構良く見てるのね」


レナが明らかに「それって意外」と言いたげな表情になる。
口調も心なしか明るくなっていた。


「そりゃあお前、あいつとは・・しょっちゅう一緒に行動してるんだぜ？？
そのくらい分からなくてどうするよ？？」
「そうだよね〜〜・・それにしょっちゅう一緒にウイングも墜としてるし・・・」
「・・なっ！？・・」


ちぇっ・・・ちょっと元気になったと思ったらすぐこれだ。


「ごめんごめん。でもね。あたしもずっと同じこと思ってたの。それで・・その・・・何でだろう、って」


少しだけレナが言い淀んだが、それが何故なのかは、俺にはよく分からなかった。
けれど、今の俺にも、たった１つだけ分かっていることがある。
それは・・・


「レナ、俺さ・・お前に１つだけ確実に言えることがあるんだ」
「え・・何よ？？」
「あのさ、ダイゴの心に入り込んで、あいつの壁を壊すことができるのは・・それはお前しかいない、ってことだよ」
「え・・！？」
「・・だから、思い切ってあいつに胸の内をぶつけてみろよ。お前なら・・きっと上手くやれるさ」


・・ちょっと悔しいけどな、という言葉は、あえて心の中にしまっておく。
俺が言い終わると、レナは・・いつものレナの顔に戻っていた。


「驚いた（笑）・・・シンジョウ隊員、案外いいとこあるじゃない？（笑）」
「おいっ！？案外とは何だよ・・あんがいとはっっ！？」
「細かいこと気にしないの（笑）あ・・でもさぁ・・・」
「何だよ？？」
「割と色んなことに気がつくのに、何でそうモテないのかなぁ〜・・？？」
「っ・・レナお前っっ！！」
「だぁかぁらぁ・・気にしないって（笑）・・・・・けど・・どうもありがとね」


今まで散々茶化しておいて、ふっと真顔になってそんなことを言う。
ああ・・やっぱりこいつには叶わない・・・
すっかり元通りになったレナを前にして、心の底からしみじみとそう思いながら、その一方で俺は、そんなレナに酷く期待している自分にも気がついていた。


頼むぜレナ、ダイゴのことをよ・・


２人して司令室への道を辿りながら、先を行くレナの背中に向かって、俺は心の中でそっとそう呟いたのだった。






Ｅｎｄ






後書き(^◇^;)

という名の毎度ながらの言い訳f(^ー^;
前回レナが全然出せなかったんで、今回は思いっきり出してみました（笑）
（←でも、そしたら今度はダイゴが出せなかったという・・(;^_^A アセアセ…）
エースパイロットというポジションもさることながら、例えどれだけタカビーでも（笑）、それが全く嫌味にならない彼女が大好きっす(^_-)-☆
イルマ隊長と共に、まさにウルトラにおける新しい女性像を確立してくれた、素晴らしいキャラだと思ってます。
あ・・超蛇足ながら、話の中でレナが言い淀んだのは、もちろんダイゴ＝ティガであることに薄々気付いているから、です(^^ゞ

・・・と、何やら真面目な話はこの辺でおい＼(^^＼)といて (／^^)／・・・
話的には、この後「Ｐｒａｙ　ｆｏｒ　ｙｏｕ」に続く感じかな、と。
タイトルも同じぐらいベタだし・・・(^◇^;)
に、しても・・・
なして張り合うかなシンジョウ・・・（爆）
って・・実はその辺の、友情というか・・疑似兄弟関係というか・・・その他諸々の（笑）ちょいと濃ゆいファクターが、σ(o^_^o)の「墜落コンビ」に対する愛の根幹なので(^^ゞ、どうか悪しからずご了承下さいませ<(_ _)>


・・・・ともあれ・・・読んでいただいてどうもありがとうでした(^_-)-☆
（２０１２．７．１２　ＵＰ）


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