Ａ　Ｈａｒｄ　Ｄａｙ’ｓ　Ｎｉｇｈｔ！？ 「・・ったくよぉ・・なんでよりによってホリイのヤツにあんな可愛い彼女ができるんだよぉ・・・って・・おいっ！・・ダイゴっ！！お前俺の話聞いてんのかっっ・・！！」 「・・はいはい・・ちゃんと聞いてますって・・・」 ・・一体さっきから何回このやり取りを繰り返しているんだろう・・・ 流石にちょっとうんざりしつつ、手元のグラスに視線を落とす。 その中身は、元々は焼酎のロックだったのだが、今は溶けかけた小さな氷の欠片が僅かに数個、底に残っているだけだった。 もちろんシンジョウに付き合って、とりあえず一杯だけ注文したやつだ。 ダイゴがそれをちびりちびりと飲んでいく間に、その１０倍ぐらいのハイペースでシンジョウはグラスを空ける。 彼に誘われて居酒屋に行った時は、いつもこのパターンだった。 だから・・ ま、こうなることははじめから分かってたんだけどさ・・ それでもその誘いを断らないのは、そんな彼の飲み方が決して嫌いではなかったからだ。 そもそもほとんど酒の飲めないダイゴには、酔った勢いで自分をさらけ出すと言うこと自体できない相談だったのだが、もし人並みに飲めたとしても、シンジョウほどストレートにその時々の心情を吐露できるかというと・・正直やや疑問だった。 そしてそれ故にダイゴは、それができる彼に対して、羨ましいという気持ち以上に、その真っ直ぐさを好ましいと思う感情を持ち続けていたのだ。 なので今回も、貴重な自分の時間が彼の為に約２〜３割削られたことに対する不満はまぁなかったのだが・・ ・・・ちょっとは体格の差っていうものを考えて欲しいんだよなぁ・・・ お決まりのラストコース（笑）、酔いつぶれたシンジョウを部屋まで連れ帰る段になると、毎度ながら切実にそう思う。 基地まではタクシーが拾えるので困りはしないのだが、降りてからが一苦労で、いくらぼやいてみても、手助けしてくれる人物が現れる訳もなく、ふうふう言いながらやっとこさ部屋に入れて、とりあえずベッドに寝かせると、心底やれやれという気持ちになった。 いつもならそのまま自分の部屋に帰るのだが、ふと思いついて司令室に足を向ける。 確か今夜の当直は・・・ 「あっきれた〜！！ダイゴってば人がよすぎじゃない！？」 案の定、思ったとおりそこにはレナがいて、何故私服姿でこんなところに？？と怪訝そうな目を向けたので、とりあえず今までの顛末を一通り語った途端の第一声がこれだった（笑） 「でも、そのまま放っとく訳にはいかないだろ？？」 「何言ってんの！・・そんなの放っときゃいいのよ！！何ならその辺の道端に転がしたままにしたってかまわないのにぃ〜・・」 「・・ちょっ・レナ・・結構過激なこと言うじゃん（笑）」 「当たり前よぉ〜・・だって養成所時代、シャッター降りた店の前で、仲間達とよくそうやって朝まで転がってたっていう話だし（笑）」 「そうなんだ（笑）じゃ、次からはそうするかも（笑）」 シンジョウには悪いが、レナの話を聞いていると、不思議とさっきまでの肉体的努力（笑）が報われたような気持ちになる。 と同時に、居酒屋で盛大に愚痴っていた彼の様子が思い出されて、ダイゴは思わず笑いながらレナに告げた。 「それにしてもさ・・シンジョウさん、ホリイさんに彼女ができたのがよっぽどショックだったみたいだよ」 「ったく・・しょうがないわねぇ・・。いくら自分がモテないからって言って、そこまで僻むことないじゃない！？」 「・・でもさぁレナ・・そんなにシンジョウさんってモテなかった訳？？」 養成学校時代の話題になる度に、必ずと言っていいほどレナはそういい、対してシンジョウが反論するというのが、ある意味ＧＵＴＳにおける名物（笑）の１つともなっているのだが、ダイゴからすれば、本人の言うようにルックス（笑）もスタイルも人並み以上によく、多分養成所でも目立っていただろう筈の彼が、そこまで女性に相手にされなかったというのは、どう考えても納得できなかった。 なので丁度いいとばかりに、この機会に思い切って聞いてみたのだが・・・ 「あのねぇ・・あたしの言ってることは間違ってないの。自分から声を掛けた女性（ひと）にはことごとく相手にされなかったんだから！」 果たしてレナは可笑しそうに笑ってそう返し、 「え・・それって・・・」 その言い回しに引っかかるものを感じたダイゴが思わず声を上げる。 「そ、実は、告白されることも結構あったみたいなのよ。でもね、そっちの方は・・」 「シンジョウさんの方がタイプじゃなかったってことなんだ・・！！」 「正解〜！！自分が好きになるタイプと、自分を好きになるタイプが、どうしてああも一致しないんだか・・考えてみれば、それもある意味不幸よねぇ（笑）」 レナはそう言ってくすくすと笑ったが、不意に何かを思案するような顔で小首をかしげ・・その後もう一度笑顔に戻って話を続けた。 「・・そう言えば・・ねぇ・・ダイゴはどうなの？？やっぱりシンジョウさんと同じように、両方のタイプに違いがあったりすると思う？？」 口調はさっきとほとんど変わらないが、心なしか声が弾んでいる。 そして注意深く観察すれば、その瞳に微かな期待の色が浮かんでいるのも見て取れたのだが・・ 「え！？・・そんなこと急に言われても・・・今まで考えたことなんてないんで分かんないよ・・」 無論のことダイゴがそれに気がつく筈もなく・・それだけならまだしも、いきなり尋ねられたことに対する焦りから、よりによって咄嗟に心に浮かんだままを言葉に出してしまい、 「・・・ふうん・・・そうなんだ・・・」 「あっ・・じゃあさ、レナの方は？？やっぱり好きなタイプとかは決まってる訳？？」 おまけにそれを聞いたレナの口調が、明らかにトーンダウンしたのを意識する前に、何気に追い打ちをかけるような質問をしてしまっていた。 「・・え・・あたし？？・・そっか〜・・ダイゴはそれをあたしに聞くんだ・・・」 レナの言葉が不自然に途切れ、挑むような眼差しがダイゴを捉える。 ２人の間に流れる空気が明らかにそれまでとは変わり、事ここに至って、ようやく彼は自分が今置かれている状況を、おぼろげながらにも理解した。 ・・しかし多少理解したからと言って、それに適切に対処できるかというと、当然ながらそれはまた全く別の話でもある訳で（笑） 「いっ・・いやその・・あのさ、タイプって言っても色々あるよね・・イルカとか（笑）・・あ・・でも、この場合はやっぱイルカじゃなくて人間の方・・か・な・・？？」 「・・・・・・・」 「・・えっと・・・レナ？？急にどうしちゃった・・」 「・・・・バッカみたい・・！！」 案の定、慣れないシチュエーションに慌てた挙げ句に、対処できない見本の様な対応をして、結果ダイゴは、いつか久良々島沖でシンジョウと共にＧＷ１号を墜とした時のような勢いで、あえなくその場に撃沈したのだった（笑） 「・・あのさレナ、俺の言い方が悪かったんなら謝るから・・・」 「・・いいからもう部屋に戻って寝たら？？ていうか、長居されると仕事の邪魔なのよね〜・・」 「・・・・そうします・・・・」 すっかりとりつく島もなくなった彼女に冷たくあしらわれ、とぼとぼと足取り重く部屋に戻りながら、 ・・全てはシンジョウさんのせいだっっ！！ ・・ベッドの中で安らかに眠っているであろうその顔が突如脳裏に浮かび、思わずダイゴは心の中で盛大に八つ当たりする。 きっと今頃シンジョウは、夢の中でクシャミをしているに違いない（笑） ・・・こうしてその日のダイブハンガーの夜も、穏やかに！？更けていったのだった。 おわる 後書き(^◇^;) ああまたこんな独りよがりなものを・・・ って・・・それは毎回やろ！！と、言われる前にツッコんどくっす(^◇^;) でもって・・まずは一言「ヘタレなダイゴですみません(;^_^A アセアセ…」＞ファンの皆さま 勝ち気でタカビーなレナ（←でもそれが全然イヤミじゃない）が大好きなんで、どうしたってこんな感じに（笑） あと、２２話時点ぐらいではまだ２人の関係もこれくらいかなぁ・・・とも思ったり あ・・蛇足ながらシンジョウは元々ヘタレてます（笑） ・・てことは、ひょっとしてσ(o^_^o)のツボは「墜落コンビ」＝ヘタレコンビなのか！？と今になって気付いたりして(^^ゞ ともあれ・・書きたかったシチュ（謎）も書けたんで、毎度ながら自分（だけ）は満足っすf(^ー^; ではでは・・・読んでいただいてどうもありがとうでした(^_-)-☆ （２０１２．７．２１　ＵＰ） 戻る