「隊長・・隊長はどこまで自分が完璧でなきゃ気がすまないんですか・・」

「耕作・・？？」

訝しげに彼の顔を見遣る傍らの拳にはかまわずに、そのまま一気に話を続ける。

「だってそうでしょ？？
信じたいけど不安になる、十分考えたつもりがそうじゃなかった・・そんなの、人間誰でも一度や二度・・いや、数え切れないぐらい経験してますって。
だから俺が隊長の立場だったとしても、きっと同じように悩んだり、苦しんだりしてる筈ですよ。
そして時にはその苦しさから逃げたくなることもある・・そんなの人として当たり前のことじゃないですか・・それで自分が許せないなんて言ったら、この世の中に許される人間なんていなくなってしまいますよ。
それに・・そんな自分にいつまでも拘っているより、それこそ彼女の・・彩子さんの気持ちを一番に考えてあげるべきじゃないんですか？？
確かにあの時隊長が彼女を日本に返さなかったら、彼女はロボットにはならずに済んだかもしれない。
けど、だからって彼女が隊長を恨んだりしてないのは、隊長だってよく分かってる筈でしょう？？」

「耕作の言うとおりですよ隊長っ・・」

彼の言葉に触発され、拳も又誠心誠意隼人に呼びかける。

「それどころか・・彩子さん、隊長に本当に感謝してたじゃないですか。
俺思うんだけど・・あの時彩子さんの流した涙は、隊長に会えて良かった・・っていう、嬉し涙だったのかも知れないな、って・・」

「けん・・！！」

その瞬間、驚きと戸惑いが入り交じった小さな叫びが、隼人の口を突いて出た。
思わず顔を起こし、信じられないといった面持ちで拳を見上げる。
その様子に少し照れながらも、持ち前の明るさで、前より少し声のトーンを上げて、拳は続けた。

「だって、隊長が二度も自分のことを信じてくれたんですよ。そのおかげでお母さんにも会えたんだし、嬉しくない訳がないじゃないですか・・！！
だから、最期の最期に・・隼人さんありがとう、って言おうとしたんだって・・その心が奇跡を起こしてあの涙になったんだって・・俺そう思うんですよ。
だからね・・隊長、いつまでも自分を責めるのは止しましょうよ・・
彩子さんの為にもっ・・！！」

言い終わってにっこりと笑う。

・・と、その時・・
見開かれた隼人の瞳から、徐々に涙の雫が溢れ出し、その喉からは押し殺した嗚咽が漏れ始めた。

「隊長・・・」

耕作が歩み寄り、手を貸して隼人を立たせてやる。
そっと促すと、隼人は躊躇うことなくその胸に身体を預け、それまで堪えていた感情を、涙と共に一気に吐き出した。

「隊長〜・・」

自身も又涙ぐみながら、拳がその背中を幼子をあやすように繰り返し撫でる。
心地よいその感触に身を委ねながら、それまで自分を覆っていた自責の念と、底知れぬ喪失感が、少しずつ薄れていくのを隼人は感じていた。



やがて・・

「ありがとう耕作、拳・・
俺は・・俺は本当にいい仲間達に巡り会えたと思っているよ。
至らない隊長かも知れないけど、これからもよろしく頼むな。」

隼人がそう言って右手を前に差し出す。
その顔は晴れ晴れとした笑顔で、彼の中で今回の件が一応の決着をみたことを如実に示していた。
無論傷が全て癒えるのはまだまだ先のことかも知れない。けれど少なくとも彩子に対する想いが、今後隼人に今までのような胸の痛みをもたらすことはなくなっていくに違いない。
そう確信して、耕作は同様の笑顔で、その上に自分の右手を重ねた。
そして拳もまた。

「耕作！！拳！！」
「隊長・・」
「隊長っっ！！」

３人の視線が互いに交差する。
それ以上何も言わなくても、重なった掌から、それぞれの熱い思いが伝わってくるようだった。

「さ、そろそろ戻るか〜・・」
「そうだな、本部長も愛も、一体何やってるんだって怒っているかも知れないし・・」
「あ・・それより俺、結構腹減ったかも〜・・・」

他愛もない会話を交わしつつ、揃って執務室へと足を向ける。
その誰もが、自分達の絆がより一層深まったと確信しながら。
夕日が彼らを包み込み、辺り一帯を茜色に照らし出す。
それはまるで、明日への希望をつなぐ光のようだった。





※後書き・・・という名の言い訳・・・(;^_^A アセアセ…

いやもう・・・この２２話ラストの脳内補完としては、あの後その場で絶叫する隼人と、そんな彼をいたたまれない思いで見つめる耕作＆拳・・・って感じが一般的（一般的て・・f(^ー^;）だと思うし、現にσ(o^_^o)もよくそうしてる（爆）訳なんですが、それだけにその手のシチュはもうすでに二次創作の場で目にしていたんで(^^ゞ、今更その二番煎じをやっても仕方ないやろ〜・・・というのがまずあって、ならどうすべ？？とつらつら考えていた時に、彩子が約束の期日を過ぎても戻ってこないことに対し、当時の隼人はどう思ってたんだろう？？っていうのが結構気になったんっすよね・・・
話の中では、個人の意志による逃亡ではないと思っていた・・みたいなことを言ってましたが、それならそれで、彼女はどうなったのか？？っていう・・
普通なら、そこできっと色んなことを思い悩む筈ですよね・・・
で、そこから発展して色々でっち上げた、と(^◇^;)
きっと本編と矛盾が生じてるんじゃないかと思いますが(^_^;、それはいつものことなんで(;^_^A アセアセ…
あ・・タイトルはもうそのまんまです（爆）
我ながらセンスなさすぎ・・(´ヘ｀;)ハァ

に、しても・・・毎度ながら自分の作文能力のなさに嫌気が(´Д｀)ﾊｧ…
最後は開き直ってＵＰしましたが・・・（；^ω^）
ともあれ、最後まで読んでいただいてどうもありがとうでした(^_^)