「うそっっ！？ じゃあ愛は、最初っから俺達のことを知ってたっていうのか！？」


素っ頓狂な拳の声が、突如執務室内に響き渡った。
それは夏目博士の事件が一段落した日の夕方のこと。
博士の息子という、思いがけない人物が犯人だったことに驚きはしたものの、タイムマシンが悪用されなかったことに対する安堵と、件の息子も更生する可能性が高いことも相まって、一様にほっとした雰囲気の中で始まった雑談がそもそものきっかけだった。


「・・・そう言えば・・・愛、お前高校生の時は古風にお下げ髪だったんだな」


意味深な口調で耕作が話を切り出して、すかさず拳に目配せすると、


「そうそう・・・とっても良く似合ってたよ、愛ちゃん（笑）」


待ってましたとばかりに拳が続ける。
無論それは、「え！？何で２人がそんなこと知ってるのよ！？」というリアクションを期待してのことだったのだが・・・


「あ・・！！じゃあ・・やっぱりあれは、今回の事件の時だったのね！」


弾んだ声でそう返されて、２人は驚きのあまりその場に固まってしまったのだ。


「え！？・・それってひょっとして・・俺達と会ったことを覚えてたってこと・・？？」
「当然でしょ」


この上もなくきっぱりと断言されて、思わず叫んだのがさっきの言葉だった。


「エクシードラフトに入って、２人の顔を見た時から、いつこの日が来るんだろう？？って楽しみにしてたんだから（笑）」


あまりの衝撃に呆然と突っ立っている耕作と拳を前にして、更に愛が追い打ちをかける。


「でもっ・・あれはもう５年も前のことなのに・・」
「何言ってんの（笑）まだ５年にしかならないのよ。覚えていない方がおかしいじゃない。
・・もちろん耕作さん達だけじゃないわよ。初対面のうら若き乙女に向かって、いきなり年を聞いた、超失礼な人のことだって、ちゃ〜んと覚えてたんだからっ！」


「ごふっ・・げほっ・・っ！！」


途端、明らかに何かにむせたらしい咳が聞こえ、思わずその方向に顔を向けた一同の視線の先には、コーヒーをテーブルに零してわたわたしている隼人の姿があった。


「何やってるんすかぁ隊長〜〜（笑）」


自分の立場も忘れて拳がツッコミを入れる。


「あっあれは・・・あの場合ああするより仕方がなかったからであって・・その・・」


その拳の言葉も耳に入らない様子で、しどろもどろに言い訳を始めた隼人だったが、容赦なく愛に睨まれ続け（笑）、ついに


「・・・すみませんでした・・」


ぼそっと呟いて頭を下げた。


「ぷっ・・！！」


普段の隼人からはちょっと想像もつかないその態度を目の当たりにして、こらえきれずに愛が吹き出す。
つられて耕作と拳も笑いだし、それは次第に爆笑へと変わっていった。


「おいっっ！？お前達は俺と同罪じゃないかっ・・！！」


慌てて隼人が抗議の声を上げるが、３人の笑いは止まらない。
それどころか、


「やだ・・私ホントは全然怒ってなんかないんですよ。
でも・・・あ〜・・すっきりしたっ！いつかこの日が来たら、絶対これを言うんだ、って心の中で決めてたんですもん」


明るく愛が言い放ち、


「・・・そりゃないぜ愛・・ちゃん・・・」


流石の隼人がそうぼやいて、執務室内はひとしきり沸いた。
気がつくといつの間にか、桂木本部長までがその中に加わっている。


「じゃあ・・日向君は、隼人のことも、本当に最初から知っていたんだね？」
「はい。・・けど、あの時の隊長は、記憶の中と見た目があまりにも違っていたので、え！？この人だっけ！？って、ちょっと戸惑いましたけど（笑）」


正直な愛の答えを聞いて、再び執務室内が笑いに包まれる。
と・・


「けど・・そのことを今までずっと黙っていたのは何故なんだよ！？」
「そうだよ・・愛も人が悪いなぁ・・（笑）」


ようやく肝心な点に思い至ったらしく、耕作と拳が口々に言い募った。


「あ！・・違うの・・・それは・・・」
「不用意に喋ることで、未来の出来事に影響を与えてはいけないから、だろ？？」


すかさず隼人が後を続ける。


「そのとおりです。流石は隊長！」
「へぇ・・やるじゃん愛！」


愛が素直に賞賛の声を上げ、拳は反対に、そんな愛に感心しきりだった。


「でもさ・・考えてみたら、あの時の俺達って相当怪しかったよな？？（笑）
よく警察とかに連絡しなかったな、愛」


ひとしきり盛り上がった後、耕作が思い出したようにしみじみと言う。


「ああ・・それはね・・」


答えかけた愛が、ふと遠くを見るような目になって・・次いでにっこりと笑う。
そして言った。


「それは、３人共とても優しそうな感じがしたからよ。それに・・お互いの仲も良さそうだったし・・
だから、この人達はきっと悪い人じゃないって・・そう思ったの」


・・・そうなのだ。あの時あの場で３人が纏っていた雰囲気には、丁度今、この執務室を覆っているのと同じ暖かさがあった。
だから自分は、最初ちょっと警戒しただけで、その後は彼らに悪意がないことを疑いもしなかったのだ。


・・・私、ここで働くことができて本当に良かった・・・


素晴らしい上司と仲間達に囲まれての充実した日々を振り返りつつ、愛は心からそう思ったのだった。






おわり






後書き

いきなり思いついたネタなんすけど(^o^)ここんとこ色々とアレなので（爆）今回はほのぼのを目指してみました（笑）
ＳＲＥＤ３人の和みシーン・・・本編でももっともっと見たかったなぁ・・とf(^ー^;
ともあれ、楽しんでいただけたら幸いっす(^_-)-☆