■　ストーリー

東映での柳生十兵衛シリーズ最終作にして最高傑作。
新陰流正統の名を巡って、柳生に挑戦してきた幕屋大休を、スター復帰後初めて悪役を演じる大友柳太朗が勤め、十兵衛と、まさしく死闘と呼ぶにふさわしい戦いを展開する。
（剣聖　近衛十四郎チラシより）


■　キャスト

柳生十兵衛（近衛十四郎）・幕屋大休（大友柳太朗）・城所早苗（河原崎長一郎）・美鶴（宗方奈美）
徳川家光（林真一郎）・柳生但馬守（香川良介）・松平伊豆守（北竜二）・庄田喜左衛門（内田朝雄）


■　感想

先の「車夫遊侠伝　喧嘩辰」が、スクリーンに見入ってしまう映画だとしたら、本作はまさに「スクリーンから目が離せない映画」やと思う。

大画面で見るのは、去年京都であった「HISTORICA」に次いで２度目なんやけど、今回の方がスクリーンと客席が近い分、より迫力があったかな。
もうな、「忍者狩り」と同じく、どこにも無駄なカットがなくて、上映時間の８６分がマジあっという間やねん。

いや、無駄どころか、指は落ちるわ手は飛ぶわ、目玉は飛び出るわで、かなりな残酷描写バリバリなのに、それが浮いたりわざとらしくなったりはしてなくて、あくまでも必然として描かれている様といい、水中撮影も駆使した湖族の襲撃シーンといい、思わず目を見張るシーンのオンパレードなんだよん。

それに何より、主役の十兵衛は絶対的ヒーローでも何でもなく（←これ自体は柳生武芸帳シリーズ後期に共通してるけど）、それどころか、ひょっとして死ぬんじゃなかろうか？と言うところまで追いつめられる始末で、クライマックスはその十兵衛＝近衛さんと、幕屋大休＝大友さんの２大スターが、琵琶湖岸で膝上まで水に浸かってどろどろになりながら、ぎりぎりの命のやり取りをとことんリアルに繰り広げるという・・

いやもう・・これを傑作と言わずして何と言おう・・！！と、食い入るように画面を見つめつつ、辛うじて思考可能な頭の片隅でそう思ったぞ（笑）

・・って、実は今でこそそう断言できるけど、昔「ヒーローな」柳生十兵衛が好きだった頃の自分だったら、絶対に受け入れがたいもんがあっただろうなぁ・・（爆）
それが近衛さんのファンになり、柳生武芸帳シリーズの十兵衛の格好良さに目覚めたからこそ、その究極とも言える本作に対してこういう感想が持てるようになった訳で、そう考えるとめちゃくちゃ感慨深いもんがあったわ(^^ゞ

時に本作のストーリーは今更言うまでもないけど、一応簡単に書いとくと、正式な印可状を持ち、自分こそは新陰流の正統な後継者だと主張する幕屋大休に、将軍家の威信と柳生新陰流の存続をかけて柳生十兵衛が挑む話、だよん。
もうこう書いてても分かるように、最初っから正義云々の戦いやないねんな。
ていうか、むしろ大休の主張こそ正しいんじゃねぇの？って感じやし、その大休を近衛さんより格上のスターな大友さんが演じることで、なお一層十兵衛の悲壮感も際だったんやから、まさにキャスティングにおいても奇跡のような作品だったんやなぁ・・という気がする。

でもって、特に今回鑑賞して一番印象に残ったのが、やっとのことで大休を倒した十兵衛が、彼の手から印可状を取り（←また大休が握りしめてて、なかなか取れんのがええねん）、一旦目を通してから懐にしまうシーン。
この時の十兵衛＝近衛さんが、一瞬安堵した後に見せる言いようのない空しさの表情が堪らんわ〜〜（=●＾0＾●=）
もうな、今までの死闘に対して、尤も空虚感を抱いているのは彼なんや・・というのが、ひしひしとこちらにも伝わってきて、何とも言えん気持ちになったぞ。

そしてこの「戦いの後の空虚感」こそが、「片目水月の剣」とか「片目の忍者」なんかにも共通する、後期柳生武芸帳シリーズの特徴のうちの１つとも言うべきものなんだろうと思う。
その意味でも、この「十兵衛暗殺剣」だけじゃなく、他作品もできるだけ多くの人に見てもらいたいし、その為にも是非このシリーズはＤＶＤ（←無論ブルーレイでもＯＫ）として発売して欲しいと切に願うよん。
（←ちなみに、個人的には初期の明朗時代劇テイストも好きなので、できればＢＯＸ仕様でよろしく！！）
あ・・とりあえず本作に関しては、デアゴスティーニの時代劇コレクション第５２号として、１２月にＤＶＤ化されるんで、まだご覧になったことがない方も、この機会に見てみてねん(^_-)-☆

って・・なんや、いつの間にかデアゴの手先に成り下がっても〜たけど(^◇^;)、要は今回この「剣聖近衛十四郎」のプログラムの一環として、改めて本作を鑑賞できたことに、心から感謝したいよん、ってことで。


（２０１０．１０．１７　近衛十四郎映画祭（ラピュタ阿佐ヶ谷）にて鑑賞／１０．２０　ブログ掲載）